2018年度 個人的エロゲ・小説ランキング(Best5)

1 前書き

 

2018年も終わりが近づいてきました。ということで、今回は2018年の総括を進めていきます。具体的には、小説・ノベルゲームの今年のベスト5を挙げつつ、それぞれの作品にコメントを加えていく というかたちで進めていきます。また、以下の内容にはネタバレが含まれております。ご注意ください。

 

小説

 

5位 『刺青の男』

 

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当ブログにおいて、記事を挙げたことがあります。あらすじは、夜中になると、ある男の無数の刺青が蠢き出し、それぞれが物語を描き出すというもの。刺青の男の話を枠物語に個別の話が展開されていくという点で『千夜一夜物語』を彷彿させるところがあります。

さて、それぞれの物語はどのようなものかと言えば、その内容は多岐にわたります。未来からのタイムトラベラーと追手との逃走劇(?)を描いた『狐と森』。ロケットマンの父と子と母の関係を描いた『ロケットマン』。世界の終焉の夜、ある家庭の様子を描いた『今夜限り世界が』など 様々な物語が展開されていきます。ですが、いずれの作品においても、登場人物たちの心情が丁寧に描かれており、抒情的な筆致が貫かれています。短編集ということで、読みやすい作品でもあります。

もし、気になったかたがいらっしゃるならば、こちらのブログで『刺青の男』の対談の記事を掲載しているため、よろしければ、ご一読いただくと助けになるかもしれません。

 

4位 『宇宙の眼』

 

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ディックの作品です。実のところ、ディックの作品には苦手意識がありまして、数年前に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を読み(ディックの作品に触れたのはこれが初めてでした)それに乗り切れなかったこともあり、苦手意識を引きずっていたのですが、今年に『スキャナー・ダークリー』という作品を読んで、それが楽しめたこともあって、ディックの他の作品に触れてみようと思い立ち、本作品を読むことになりました。

さて、話を戻します。あらすじは、ビーム偏向装置が暴走し、八名が事故に巻き込まれた。そのなかの一人、ジャック・ハミルトンが目を覚ますと、そこは現実の世界とは異なり、ある宗教が支配的な位置を占める世界だった…… というもの。

その後、ジャックたちは不思議な世界を転々としていくのですが、そのなかでそれらの世界がそれぞれの認識を反映したものであることが明らかになります。

この作品では、客観的な世界があるとしても、その世界への各々の認識は異なり、ある人の視点では世界が悲惨なものであったとしても、視点を変えると世界も変わるということが提示されています。このことから、当人の意識によって、世界は姿を変える。だからこそ、そこから、世界を変えていくという前向きな精神が描かれているように思えました。

個人的に、『素晴らしき日々』や『何処へ行くの、あの日』や『俺たちに翼はない』などのノベルゲームが思い起こされたこともあり、印象深いものとなりました。

 

三位 『ハーモニー』

 

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こちらもブログの記事を挙げたことがあります。あらすじについてはそちらを参照ください。さて、この作品ですが、実のところ、読むまでにかなりの期間を要しています。というのも、氏の『虐殺器官』に乗り切れなかったというところがあり、距離を置いていました。ですが、何となしに手に取ってみたところ、楽しむことができました。なかでも、本作品の終盤の展開は非常に印象深いものでした。個人的に、自分はこの作品を『BEATLESS』の文脈で読んでしまったところがあります。『BEATLESS』においては、人間の仕事のいくつかはhIEに外部委託されており、社会において、人間の役割は変わりつつあります。ですが、社会において、hIEの領域が増えつつあると言っても、人間にはhIE のオーナーとしての位置が残されています。『BEATLESS』ではオーナー(人間)としての道具への責任が描かれているとすると、『ハーモニー』ではその責任さえも無化していまうようなビジョンが提示されていました。それは、ある意味では理想の世界なのかもしれませんが、グロテスクなものであるように思えました。

 

二位 『なまづま』

 

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こちらもブログの記事を挙げたことがあります。あらすじについてはそちらを参照ください。さて、この作品ですが、書店を回っているときに偶然発見し、興味を惹かれたので、購入したのちにすぐに読み終えてしまったという経緯があります。本作品の見所は、妻を生き返らせるためにヌメリヒトモドキという生物の飼育を続けるうちにその生物への愛着が発生してくる というところにあるように思えます。当初、男はヌメリヒトモドキに嫌悪感を覚えるのですが、徐々にそれに愛着を覚えていく。そして、男の心境が変わるにつれて、ヌメリヒトモドキの描写も変化していく。このように、筋書きはシンプルなものの、随所の描写が非常に細かく(くどいと言えるかは微妙なところですが……)ヌメリヒトモドキの生態がありありと思い起こされました。

 

一位 『BEATLESS

 

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こちらもブログの記事を挙げています。あらすじについてはそちらを参照ください。

ということで、一位は『BEATLESS』です。この作品もタイトル自体は以前から知っていたものの、なかなか、手を出すことがありませんでした。そのことに特に理由はなかったのですが、実際に読んでみると、のめり込んでしまいました。これほどにのめり込んだことの理由はいくつか考えられますが、やはり、アラトとレイシアの関係がオーナーと道具に終始していたことにあります。人間性を根拠に倫理が要請されるのではなく、それが道具だからこそ、道具への倫理が要請されるという視点は自分には斬新なもので(ヒューマノイドを題材としたものではそれがどのように扱われるかが問題となったとき、対象の人間性がどれほどのものかが基準となる という印象があったので)だからこそ、その視点に惹かれました。あと、スノウドロップというキャラクターが良いですね。彼女は「人間の進化の委託先としての道具」であり、自身の行動の原理に沿って、社会に敵対するのですが、その行動の背景の原理も設計されたものと考えると、スノウドロップの行動自体が道具であることを顕著に示していて、何とも言えない気持ちになります。(そこが好きなのですが)

 

 

ノベルゲーム

 

五位 『君の名残は静かに揺れて』

 

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こちらもブログの記事を挙げています。あらすじについてはそちらを参照ください。

ということで、五位は『君の名残は静かに揺れて』です。まず、何が良いかと言えば、タイトルが良いですね。『君の名残は静かに揺れて』思わず、口にしたくなります。話を戻すと、本作品は『Flyable heart』という作品の外伝に位置付けられるものらしいです。自分は『Flyable heart』を未プレイでしたが、十分に楽しむことができました。一人の登場人物に焦点が当てられており、内容もコンパクトに纏まっているため、非常に読みやすい作品だと思いました。 以下、抜粋

 

(1)個人的に好きなシーン

 

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 誰かのためにあることが当たりまえの茉百合に「ここには誰もいない。お互いに何も知らない。だから、あなたは何者でもない」(意訳)という言葉がかけられたことは大きい。

 

 

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茉百合の変化が顕著に表れている。一人になっても、自分で在り続けるという宣言が良い。

 

四位 『そして明日の世界より

 

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こちらもブログの記事を挙げています。あらすじについてはそちらを参照ください。

さて、第四位は『そして明日の世界より』です。先日、読み終えたばかりですが、個人的にお気に入りの作品です。まず、主題の展開が徹底されているという印象。個人的に、主題はあまり好みではないのですが、展開のされかたが好みだったので、高評価をつけました。また、CG・背景が非常に綺麗だと思います。なかでも、御波ルートの最後のCGには感銘を受けました。個人的に、水守御波というキャラクターが好みだったので、キャラクターの可愛さを楽しむこともできました。以下、いくつかのシーンを抜粋

 

(1)個人的に好きなシーン

 

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 文字通りの場面 御波の主張には頷けるところがあります。可愛い。

 

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仕返しに昴の頬にキスをする場面 大人しそうに見えて、茶目っ気があるところも良い

 

三位 『サナララ

 

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こちらもブログの記事を掲載しています。あらすじについてはそちらを参照ください。

はい。第三位は『サナララ』です。サナララについては記事のほうで語りつくしてしまったところがあるので、あまり語ることはないのですが、本作品をプレイしているときに精神的に参っていたということもあって、この作品には救われたところがあります。本作品では、「チャンス」に頼るのではなく、自分の力で「お願い」を叶えることが描かれます。そして、チャンスは自身の力で何かを掴み取るための一助にすぎないという主張はある種の綺麗事であるように思えてしまいますが、だとしても、本作品の登場人物たちのひたむきな姿に心をうたれました。(とりわけ、三章には完全にやられてしまいました)

 

 

二位 『しろくまベルスターズ♪

 

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ということで、二位は『しろくまベルスターズ♪』です。実のところ、全部のルートをクリアしていないので(三つのルートは読み終えているものの)、ここに挙げるべきかで悩んだのですが、今年にプレイしたなかでは印象深い作品ということもあり、挙げることになりました。

さて、本作品ではクリスマスにプレゼントを配るためにサンタとトナカイたちが奮闘する姿が描かれています。そして、個別ルートではそれぞれのサンタの問題に焦点が当てられていく という構成がとられています。

なかでも、月守りりかのルートは非常に出来が良いように思われました。前半部分での問題提起と解消の過程が後半部分での問題提起につながっていて、話の展開のなされかたが綺麗に纏まっています。また、前半部分から後半部分に推移するにつれて、二人の関係も変化してくるのですが、そのような関係の変化がHシーンに適用されていて、このあたりも良いなぁと思いました。(単純にシーンが好みだったということもあるのですが)ただ、初体験のシーンが途中でカットされていて、そこは不可解でした(あまりに不可解なので、自身の間違いかもしれません……)

とりあえず、きちんとクリアしたいと考えています……(もしかすると、今年のクリスマスに再開するかもしれません) 以下、抜粋

 

(1)個人的に好きなシーン 

 

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一位 『ラブレプリカ』

 

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こちらもブログの記事を掲載しています。あらすじについてはそちらを参照ください。

ということで、一位は『ラブレプリカ』です!生命倫理が題材とされていることで、自身の好みにストライクだったことが大きいです。この作品では生命倫理が題材とされていますが、「●●すべし」といったように明確な判断の基準は提示されません。むしろ、明確な判断の基準がなく、いずれかを選ばなければならない という二者択一を突き付けられます。このように、明確な判断の基準(倫理)が提示されていないからこそ、本作品の選択には重みが付与されているように思え、そこが良かったと思います。余談ですが、この作品をプレイして、自分は登場人物の失恋の描写を見ることが好きなのだなぁ と自覚するにいたりました…… 以下、抜粋

 

(1)個人的に好きなシーン

 

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 この種の欺瞞が自覚的に描かれているところが好みですね。

 

2 後書き

 

書いていて、非常に楽しかったです。後で見返したときに当時の自分がどの作品をどのように好んでいたかが分かるので、これからも続けていくと思います(来年もブログが続いていれば)