『リトルバスターズ! エクスタシー』名前の宿命を拒むこと、よき歯車とは(能美クドリャフカルート)

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イカロシア語: Лайка、1954年 - 1957年11月3日)は、宇宙船 スプートニク2号に乗せられたメスのの名前。地球軌道を周回した最初の動物となった。

 

 

能美クドリャフカ。彼女の名前の由来は、地球軌道を周回した最初の動物、クドリャフカ(ライカ)にある。

 

彼女の母は宇宙飛行士だった。クドは祖父と共に各国を転々しており、母といる時間は少なかった。それでも、彼女は宇宙に惹かれ、やがて、自分もそうなりたいと願うようになった。しかし、彼女はライカにはなれなかった。

 

クドリャフカの名前を冠している。けれど、ライカにはなれない。日本人離れした容姿をしている。が、内面はそうではない。周囲からのまなざしと内面の齟齬。それは彼女を苦しめた。

 

クドルートの冒頭。理樹とクドたちはテストに備え、勉強会を開くことになる。クドは英語を苦手としており、日々、教室で理樹たちと勉強に励んでいた。が、クラスの一部の人はそれを面白がっていた。そう、日本人離れした容姿をしていながら、英語(外国語)を苦手としていること(ここで重要なのは日本人離れした容姿をしているからといって、外国語が得意でなくてはならないかと言われれば、そうではなくて、彼らのなかでそういった認識が形成されていることにある)。彼らの目にはそのギャップが滑稽に映ったのだろう。

 

クドは苦悩する。自身だけではなく、一緒に勉強している理樹を奇異のまなざしに巻き込んでしまうことに。けれど、理樹は手を伸ばし続ける。クドはクドだと。

 

そうして、時間を重ね、二人は恋仲になる。が、穏やかな時間はそう長くは続かなかった。

 

彼女の故郷、テヴァ共和国でロケットを打ち上げるという報道があった。そして、クドの母親もそれに搭乗すると。しかし、ロケットの打ち上げは失敗した。テヴァ共和国の情勢は混乱を極める。

 

今、向かえば、二度と戻ってくることは出来ないかもしれない。それでも、理樹は彼女の背中を押し、クドは祖国へ向かう。母親に会うために。

 

テヴァに着いたとき、彼女の眼に飛び込んできたものは過酷な現実だった。彼女は母親の姿を探す。少しでも、自分に出来ることをしながら。やがて、彼女は祖父と再会するも、反乱軍につかまってしまう。そして、反乱軍の一人は告げる。あのライカのように、祖国のための礎となってもらうと。

 

クドリャフカはよき歯車でありたいと願っていた。世界はいくつもの歯車から構成されていて、そのなかで粛々と自身の務めを果たす、そんな存在に。そう、あのライカのように。

 

本当にそうだろうか。恐らく、そうではない。彼女は自分の犬にこう名付けていた。ストレルカと。大きいのに、ストレルカ(小さい矢)。名前と実質との不一致。

 

西園美魚が語るように、名前とは一義的なものではない。クドリャフカという名前に「祖国のための礎となった、よき歯車」という意味を見いだすものもいるかもしれない。だが、それはあくまでも一面にすぎない。そう、クドがその名前に殉じる必要はないのだ。

 

ゆえに、奇跡は起こった。起こらなければならなかった。彼女がクドリャフカであるからこそ、「祖国のための礎となった、よき歯車」で終わってはいけない。よき歯車であること。それは名前の宿命に殉じることではない。他者からの意味付けを内面化するのではなく、自分がどうありたいか。それを再定義することにある。

 

能美クドリャフカ。ライカの名前を背負い、それでも、宇宙に行きたいと願う。誰かの意志ではなく、自分の意志で。もう、彼女を縛り付ける枷はないのだから。

 

引用

https://www.weblio.jp/content/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AB%E7%8A%AC